【論文解説】金融リテラシーがあるかないかで年利がこれだけ違う!

金融教育が高校の授業で開始されるなど、最近では金融教育が話題になっていますよね。

そこで、金融リテラシーが資産運用の行動やパフォーマンスにどれほど影響を与えるかを調べた論文(1)がありましたので、そちらを解説させていただきます。

金融リテラシーがあると具体的にどれほど有利になるのか金融リテラシーがある人とない人で投資の行動にどのような差があるのかということに興味がある方は是非ご覧になってください!

目次

結論

「OEBFed」というアメリカの金融機関の従業員16,000人の金融リテラシーとデータをリンクした結果以下のような結果が出ました。

  • 金融知識がある人のほうが、月利ベースで0.08%年利で0.96%利率が高かった。
  • 金融知識がある人のほうが、手数料が少なく、ボラティリティ(変動)の大きいファンドを購入していた。
  • ただし、多くの種類の投資商品を購入しており、保有株式に多様性があり危険な市場へはあまり投資をしていなかった。(分散投資)

ただ、調査対象が金融機関の従業員ということもあり、金融リテラシーは元から高めだということが強調されています。

また、これに加えて、実験のデータとして用いたのが、確定拠出年金という「比較的安い手数料」「優良な投資信託が多い」状況であったため、実際はより年利の差が大きいのではないかと推測されます。

研究方法

この研究では、アメリカで多くの支社を持つ金融機関「OEBFed」従業員16,000人に協力してもらい、確定拠出年金を運用する際の比較をした研究です。

  • 従業員の金融リテラシー
  • ファンドの運用成績
  • 従業員それぞれの特性(性別、既婚、保有資産、職務歴、出資比率など)

これらの関係性を分析し、金融リテラシーがどれほど収益のパフォーマンスにつながるかということを調べました。

金融リテラシー調査クイズ(5問)

金融リテラシーを図る際に下のような問題が出されました。皆さんもよろしければやってみてください。

正解を太文字にしています

  • 金利:100ドルを預金として預け、金利が2%の場合、5年後いくらあるか。
    110ドル以上、110ドル、110ドル以下 正答率76%
  • インフレ:預金の金利が年1%でインフレ率が年2%の場合、一年後にその口座のお金でいくら買うことができるか。
    今日より多い、今日と同じ、今日より少ない 正答率92%
  • リスク:一つの会社の株を買うことは、株式投資信託よりも安全である。
    はい、いいえ 正答率88%
  • 節税:25%の税率で、確定拠出年金に100ドル拠出した時に、手取り額はどれほど減るか。
    100ドル減少、75ドル減少、50ドル減少、同じまま 正答率45%
  • マッチング拠出:マッチング拠出年金を会社が採用して、従業員が100ドル拠出した際に、拠出年金の口座残高はいくら増えるか。
    50ドル増加、100ドル増加、200ドル増加、変化なし 正答率77%

上三つの質問はビックスリーと呼ばれ、一般的なアメリカ人の正答率は半分ほどですが、金融機関の従業員のため正解率は高かったそうです。

下二つの質問は知識のある人でも簡単に間違えてしまう難しい問題でした。(マッチング拠出年金は日本ではほとんど採用されてないみたいなので、わからなくて当然だと思います。私も知りませんでした。。)

比較・分析

これらを成績順で並べて、正答率が低かった人と高かった人の運用方法と運用成績を比べました。

すると、以下のようなことが判明しました。

  • スコアが低かった人は「株式」に投資しない傾向にあり、投資したとしても保守的な資産配分をしている傾向にあった。
  • スコアが高かった人は、低かった人に比べて40%ほど多く「株式」を保有していた。株式保有比率:スコアが低い人18%、高い人58%
  • また、スコアが高かった人はシステミックリスクが有意に低かったことも示さている。低いスコアの人12%、高いスコアの人7%

システミックリスクを知らなかったため調べてみました。

システミック・リスクとは、経済学用語の一つ。特定の金融機関や市場が機能不全となったならばそのことの影響が他の金融機関や市場にまで、さらには金融システム全体にまで波及する金融危機を起こすというリスク

wikipedia より

例を挙げるとすると、リーマンショックだったり、最近だと「中国の不動産のトップが倒産すると、他の企業も影響を受けて危機に陥る」というような連鎖的な反応のリスクだと思います。

これは分散投資できていることや、市場としてリスクのあるところにはあまり投資していないという意味に捉えられます。

以上のことを私なりにまとめると、このように言えます。

金融リテラシーが高い人は、株式投資への投資比率が高く、リスクを高めてリターンも高めている(月利0.08%差)。しかし、危険な投資先には投資をしない傾向にあった。

また、中程度のスコアだった人は、スコアが低い人と比べてパフォーマンスに差がなかったそうです。

個人的に思うこと

金利1%差ってかなり大きい!

投資を勉強している方なら年利1%の差がどれほど大きいか分かりますよね。

例えば月3万円積み立てを20年間、年利4%で運用している場合と年利5%で運用している場合を比べる

年利4%  積み立て合計額1003万 利益283万 

年利5%  積み立て合計額1093万 利益373万

このように年利が1%違うだけで利益が32%多くなります。

それほど年利1%の差は馬鹿にできない数字です。

また、調査対象が金融リテラシーのもともと高い人たち確定拠出年金で手数料が少ない優良商品の中から選ぶという制約がありました。

そのため、現実でFX・手数料の高いアクティブファンド・個別銘柄の一点集中投機をする層そもそも投資をしない人も存在することを考えますと、金融リテラシーがあるかないかで金利1%どころではなく金利3%以上差があってもおかしくないと思います。

リスクを増やすといっても、SP500か全世界株式がちょうど良い

金融リテラシーの高い人ほどボラティリティとリスクの大きい投資をする傾向にあるという結果が出ていましたが、個人的には中国などの新興国の株はあまり手を出さないほうが賢明だと思います。市場として信用できない点が多いので。

ただ、私は、アメリカの一強が続くかは疑問視しているため全世界株式をメインで保有しています。(全世界株式もアメリカの株価にほとんど引っ張られていますが…)

システミックリスクとあったように、身を滅ぼさない程度の適正なリスクをとることが重要です!

最後に

金利差について具体的な数値を用いているこの研究は非常に興味深く、金融リテラシーの重要さがわかる研究でした。

金融リテラシーを高めて失敗・後悔しない資産運用をしたいですね。

それでは、お読みいただきありがとうございました!

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